Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
見送りの人々もいう。
祥瑞五郎大夫は、丘の上の道に立って、
「ええ、まったく」
振り顧って、しばらくじっと、眸をこらしていた。
言葉は、それだけしか出なかったが、既往十二ヵ年のことが、一度に胸へ呼び起されていた。
わけて、後に残して来た梨琴の身が、不愍であった。
その梨琴は、今朝、
「わたしは、家の窓からお見送りさせて戴きます。生なか途中まで行けば、もっともっと、日本までも、従いて行きたくなりますから」
といって、家に残った。
飽くほど、頬ずりして、泣く泣く彼女が手から離した子は下僕の捨次郎に今、負ぶわれている。男の子だ。
名は、楊景福。
見送り人は、十五、六名もいて、荷物は一頭の驢馬と、一台の鶏公車とに積んだ。見送りの一人が途中で、
「捨さん、重いだろ。長い途だから、子どもはこれへ乗せたらどうだね」
と、いってくれたので、捨次郎は背中の子を鶏公車へ移した。
車輪の大きな手押し車である。野や山坂のきらいなく押し通る小型の荷車だから、わざと歯の心棒には油を注さない。車輪が廻るにつれて、キイキイと牝鶏が啼くような軋み声をたてるので鶏公車という名があった。