Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.045 Zeichen · 322 Bildschirme

Aozora Bunko

「のん、のん、此処にも、あすこにも。」

と、あたしの頭を指で押して、空をも指さすのだった。

お婆さんの息子は車力だった。あたしは鹿の子絞りの紐を首の後でチョキンと結んで、緋金巾の腹がけ(金巾は珍らしかったものと見える)、祖母さんのお古の、絽の小紋の、袖の紋のところを背にしたちゃんちゃんこを着せられて、てもなくでく人形のおつくりである。

――ある時(妹でも出来た時かも知れない)、理髪店ではじめて剃ってもらった時、私ははじめじぶくったが、あたしを抱いていた女中が大層機嫌がよかったので、しまいにはあたしまで悦んで膝の上で跳ねた。職人はたぶん女中の頸をおまけに剃ってやっていたのであろうが、あたしがあんまり跳るので、女中にもなんしょで、ひょいと、あたしのお奴を片っぽとってしまった。あたしはなおさらよろこんだ。機嫌のよい女中におぶさって帰ってくると、すぐおせんべやの首振りお婆さんに見せにいった。ただ笑って、よろこんで指で毛のないあとを押し示した。

「あらまあ、お供さんが片っぽおちて――」

お婆さんは歯のない口を一ぱいにあいて笑った。だが、この人は直きなくなって、おせんべやは荷車の置場に、屋根と柱だけが残されるようになった。