Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.663 Zeichen · 97 Bildschirme
それから彼女が泣きながら訴えるのを聞くと、松村はまた驚かされた。
事件は今から七日前、娘のお春が三つの節句の雛を片付けた晩のことであった。お道の枕もとに散らし髪の若い女が真っ蒼な顔を出した。女は水でも浴びたように、頭から着物までびしょ濡れになっていた。その物腰は武家の奉公でもしたものらしく、行儀よく畳に手をついてお辞儀していた。女はなんにも云わなかった。また別に人をおびやかすような挙動も見せなかった。ただ黙っておとなしく其処にうずくまっているだけのことであったが、それが譬えようもないほどに物凄かった。お道はぞっとして思わず衾の袖にしがみ付くと、おそろしい夢は醒めた。
これと同時に、自分と添い寝をしていたお春もおなじく怖い夢にでもおそわれたらしく、急に火の付くように泣き出して、「ふみが来た。ふみが来た」と、つづけて叫んだ。濡れた女は幼い娘の夢をも驚かしたらしい。お春が夢中で叫んだふみというのは、おそらく彼女の名であろうと想像された。
お道はおびえた心持で一夜を明かした。武家に育って武家に縁付いた彼女は、夢のような幽霊ばなしを人に語るのを恥じて、その夜の出来ごとは夫にも秘していたが、濡れた女は次の夜にも、又その次の夜にも彼女の枕もとに真っ蒼な顔を出した。