Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.612 Zeichen · 405 Bildschirme
「そこで、早速でござりますが、わたくしが折り入って描いて頂きたいのはこれでござります」
澹山をそこに待たせて置いて、伝兵衛はうす暗い堂の奥にはいって行ったが、やがて二尺ばかりの太い竹筒をうやうやしく捧げて出て来た。彼は自分の家から用意して来たらしい蝋燭に燈明の火を移して、片手にかざしながらしずかに云った。
「まずこれを御覧くださりませ」
かなりに古くなっている竹は経筒ぐらいの太さで、一方の口には唐銅の蓋が厳重にはめ込んであった。その蓋を取り除けて、筒の中にあるものを探り出すと、それは紙質も判らないような古い紙に油絵具で描かれた一種の女人像で、異国から渡って来たものであることは誰の眼にも覚られた。伝兵衛がさしつける蝋燭の淡い灯で、澹山はじっとこれを見つめているうちに彼の顔色は変った。
「これは何でございます」と、彼はしずかに訊いた。
「弁天の御像でござります」
それは嘘であることを澹山はよく知っていた。この古びた女人像は、切支丹宗徒が聖母として礼拝するマリアの像であった。四国西国ならば知らず、この奥州の果ての小さい寂しい城下町でこんなものを見いだそうとは、澹山はすこしく意外に思って、手に持っている其の油絵と伝兵衛の顔とをしばらく見くらべていると、伝兵衛の方でも彼の顔をのぞき込みながら云った。