Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.612 Zeichen · 405 Bildschirme
その歓楽の最中であった。ひとりの奇怪な人間が影のようにあらわれて来たのであった。勿論、どこから出て来たのか知れなかったが、かれは年のころ四十前後であるらしく、髪の毛をおどろに長くのばして、その人相もよくわからない。顔のなかから鋭い眼玉ばかりが爛々と光っていた。身には破れた古袷をきて、その上に新らしい蓑をかさねて、手には海苔ヒビのような枯枝の杖を持って素足でぶらぶらと迷い歩いている。その風体がここらの漁師ともみえなかった。さりとて普通の宿無し乞食とも思われない。まずは一種の気ちがいか、絵にかいてある仙人のたぐいかとも見られるので、彼の通る路々の人はいずれも眼をみはって見送っていた。こうして、不思議そうに見かえられ見送られながら、彼は一向平気で潮干の群れのあいだをさまよい歩いているので、若い女などは気味わるそうに人のかげに隠れるのもあった。船のなかへ逃げ込むのもあった。
しかしこの奇怪な男は、別に他人に対して何事をするでもないらしかった。さりとて諸人が遊びたわむれているのを見物してあるいているのでも無いらしかった。唯その鋭い眼をひからせて、なにを見るともなしに迷いあるいているだけのことであったが、そのうちに彼は職人らしい一群に取り囲まれた。