Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.612 Zeichen · 405 Bildschirme
「馬鹿に火の手が早く廻ったな。やい、松。これじゃあしようがねえ。今度は高輪へ行け」
「伊豆屋へ見舞に行くんですか」と、松吉は云った。
「この分じゃあ、見舞の挨拶ぐらいじゃ済むめえ。火の粉をかぶって働かなけりゃあなるめえよ」
高輪の伊豆屋弥平はおなじ仲間であるから、半七はそこへ見舞にゆく積りで、更に高輪の方角へ駈けぬけてゆくと、日はもうすっかり暮れ切って、暗やみの空の下に真っ紅な火の海が一面にごうごうと沸きあがっていた。ふたりは濡れ手拭に顔をつつんで、尻端折りの足袋はだしで、ともかくも高輪の大通りまで出て来たが、もうその先は一と足も進むことが出来なくなった。
なにぶんにも風の勢いが強いので、飛び火はそれからそれへと燃え拡がって、うしろが焼けていたかと思ううちに、二、三町先がもういつの間にか燃えているので、前後をつつまれて逃げ場をうしなった類焼者は、風と火に追いやられて海辺の方へよんどころなく逃げあつまると、その頭の上には火の粉が容赦なく降りかかって来るので、ここでも逃げ惑って海のなかへ転げ落ちたものが幾百人と伝えられている。
こうした怖ろしい阿鼻叫喚のまん中へ飛び込んだ二人は、いくら物馴れていてもさすがに面喰らって、あとへも先へも行かれなくなった。