Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.612 Zeichen · 405 Bildschirme
「親分。あぶのうがすぜ」
「てめえもしっかりしろ」
群集に揉まれて、ふたりは四、五間も押し戻されたかと思うときに、大きい獣が自分たちのそばに来ていることを発見した。昼よりも紅い火に照らされて、混雑の中でその正体がすぐに判った。それは大きい熊であった。どこから飛び出して来たのか知らないが、彼もおそらくこの火に追われて、人間と一緒に逃げ場をさがしているのであろう。しかし人間に取っては怖ろしい道連れであるので、猛火に焼かれようとして逃げ惑っている人たちは、更にこの猛獣の出現におびやかされた。むかしの合戦に火牛の計略を用いたとかいうことは軍書や軍談で知っているが、いま眼のあたりに火の粉を浴びた荒熊の哮り狂っている姿を見せられた時には、どの人も異常の恐怖に襲われて、悲鳴をあげながら逃げ迷った。
熊もいたずらに人をおびやかすために出て来たのではない。火を恐るる彼は殆ど死に物狂いの勢いで、どこからか逃げ出して来たらしく、もちろん人間に咬みつく余裕はなかったが、それでも時々起ちあがって、自分のゆく先の邪魔になる人々をその強い手で殴き倒した。殴かれた者はもう起きることは出来ないで、あとから駈けて来る者にむごたらしく踏みにじられた。