Japanische Klassiker mit Furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme
彼が九つになったとしの春、母親に男ができたのである。
「こんな話は聞きたくないだろう、おれも本当のところ話すのはいやだ」と芳造は云った、「けれどもおれがどんな育ちかたをしたかって、いうことを知ってもらうためには、どうしても聞いてもらわなければならないんだ」
「そんなことないわ」とおうめはよわよわしくかぶりを振った、「なにを聞かなくったって、あたしには芳っさんがどんな人だかわかってるんですもの」
芳造は首を振った。おうめがどう云おうと、これだけは話さずにはいられない、という感情が、かたくななほどその顔にあらわれていた。これまで秘めに秘めてきて、いま初めて聞いてもらえる相手、うちあけて話すべき相手をみいだした、という強い意志が感じられた。
「それまでは村の若者たちと、酒に酔ってふざけるだけだった」と芳造はおうめの言葉を聞きながして云った、「――それが急に、若者たちは姿を見せなくなり、代って、見知らない四十がらみの肥えた、いつも眼の赤い男が一人だけ、三日に一度ずつ来るようになった、そして男が来ると、おふくろはおれに、外へいって遊んでこいって云うんだ」
男はたいてい夜になってから来る。