Japanische Klassiker mit Furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme
けれどもおみきは、そんなせんさくをしようとは思わなかった。おうめがよろこんでいっしょにでかけた、それが事実なのだ。親が子供のためを思ってどんなに心をくだいても、子の一生を左右することはできない。もしそうなれることなら仕合せになってもらいたい、と祈るよりほかはなかった。――おみきは二人を出してやったあと、むだな思案かられるため、仕事に没頭した、そしてそこへ、その男がたずねて来たのだ。
――あなたが千太郎あにいのおかみさん、おみきさんでございますね、と男は云った。あっしは千太あにいと同じ牢にいた幸助っていうけちな野郎です、ずいぶんお捜し申しましたよ。
おみきは息が止まるかと思った。頭にかっと血がのぼり、全身がふるえた。幸助と名のる男は、痩せた貧相な躯に、古いめくら縞の袷、よれよれの三尺に、鼻緒のゆるんだ藁草履をはいていた。前歯が二本抜けていて、口をきくときそこから息が洩れるし、ときどきその抜けた歯のあいだから、きみの悪いほど赤い舌の尖が覗いた。
――あっしゃあ大事な話をもって来たんですよ、男は上り框へ斜に腰を掛けて云った。じつはね、と男は声をひそめた。