Japanische Klassiker mit Furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme
千太あにいは無実の罪でお繩になったんでさ、人殺し兇状なんぞたあとんでもねえ、まったくの無実だったんですよ。
おみきは眼を細めて男を見た。
――いったい、それはどういうことですか。
――済みませんが、と男は歯の抜けた口で卑屈にあいそ笑いをした。ちょうど切らしちまってるんだが、タバコがあったら一服だけふるまっていただけませんかね。
――うちにはタバコを吸うような者はおりません。
――そうですか、ほんの一服でいいんだが、と男はみれんがましく部屋の中を眺めまわした。この辺にタバコを売る店はありませんかね。
おみきは黙って仕事台に坐り直した。幸助という男は諦めたのだろう、腰掛けている足を組み替え、とりいるような、けれどもしんけんな口ぶりで云った。
――本当に千太あにいは無実なんですよ、あにいは人をあやめるようなことのできる人じゃあねえ、それはいっしょに牢ぐらしをしていた、このあっしが証明しますよ。
――御用というのはそれだけですか。
――大事なのはこれからでさ、男は上半身をのりだし、いっそう声をひそめて云った。じつはね、おかみさん、その殺しの現場を見ていた証人がいるんです、ええ。