Japanische Klassiker mit Furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme
忘れたわけじゃあないだろうね」
おうめは火鉢の火を直しながら頷いた、「はい、おっ母さん」
「芳っさんの話はいつかまた聞くよ」おみきは言葉をやわらげて云った、「かば焼を温ためてもらおうかね、一杯飲みたくなっちゃったよ」
もう夜半に近いだろう、昏くした行燈の光が、雨漏りの跡の斑にある古い天床板を、ぼんやりと照らしていた。蒲焼で五勺ほどの酒を啜り、早く寝たおみきは眼がさめて、そのまま眠れなくなった。並べて敷いた隣りの夜具では、おうめの気持よさそうな寝息の声が聞えていた。
――五両でさ、五両だけでいいんでさ、と幸助という男は云った。辰あにいが証人になって名のって出れば、事実を知りながら黙っていたというかどで、少なくとも三十日くらいは牢へ入れられるでしょうな、ええ、地獄のなんとかも金しだいと云って、幾らかでも持っていれば、牢屋のくらしも少しは楽になるんです、ええ、ほんとなんですよ。
そうかもしれない、そんな話を聞いたような気もする、とおみきは思った。大蛇の辰はいま水天宮の近くの「佐野屋」という安宿に泊っている。千太郎のことを思いだしたら、それが気になるのだろう、博奕場へもゆかず、朝から酒浸りになっている。