Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme

Aozora Bunko

「ふるえるわ」とおくみが囁いた。

「寒いからだ」

「こんなに、ふるえるわ、恥ずかしい」

「寝るほうがいい」

「あたし、臭いかしら」

甲斐は首を振った。おくみは甲斐の衿をくつろげて、そこへ顔を押し当てながら、うっとりすると囁いた。

「このお肌の匂いを嗅ぐとうっとりするわ、ときどきふっとこの匂いが匂うのよ、いらっしゃらないとき、なにかしていて、急にふっとこの匂いがして、そうすると頭の芯がぼうっとなって、ふふ、いやだわ恥ずかしい」

「寝たほうがいい、さあ、寝かせてやろう」

「もう少し」とおくみはかぶりを振った。

「火がないから寒い、さあ、横におなり」

「少しここにいらしって」

甲斐は「うん」といった。

おくみは夜具の中へはいり、甲斐は掛け夜具のぐあいを直してやった。おくみは、お顔がよく見えないから、灯をもう少し明るくして下さい、と云った。

「そして、こちらの此処へ、お坐りになって」

甲斐は云うままになった。

「こんなお使いだてなんかして、罰が当るかしら」とおくみが云った。

横に寝て、枕の上から、じっと甲斐をみつめ、でも初めてのわがままだから、罰は当らないわねと云い、片方の手をさし出した。