Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
おみやは玄四郎の顔を見た。
玄四郎は眩しそうに眼をそらした。おみやの眼つきは急に疑いと詮索の色を帯び、なぜ彼がそんなに固執するのか、なにか理由があるのではないか、と気づいたようであった。彼女は多くの経験をして来て、特に、男の気持の動きをみぬくことに馴れていた。いま女にみつめられて、玄四郎がその眼をそらしたとき、おみやは、なにかわけがあると直感し、そして、額のあたりからじりじりと蒼くなった。
「黒田さま、――」とおみやは呼びかけた、「こちらへいらしって下さい」
玄四郎は不決断にこっちへ来、それから元の場所へ坐って、必要もないのに、そこにある刀を置き直した。おみやはそれを見まもりながら、ふるえる声で云った。
「どうぞ本当のことを仰しゃって下さい、どうしてあなたは、その証書を盗めと仰しゃるのですか」
玄四郎は、貴女のために、と云いかけたが、おみやはかぶりを振って遮った。
「お願いです、どうぞ本当のことを仰しゃって下さい」とおみやは強い視線で玄四郎をみつめ、そして、ひそめた声で「どうぞ」と云った。
「あなたは嘘の云える方ではありません、お顔を見ればわかります、どうぞ本当のことを聞かせて下さい、それによってわたくし決心を致します」