Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
給仕は誰もいない。すぐ脇に、ぬぎすてた袴がつくねてあり、脇差も投げだしたままで、正月の寒さにもかかわらず、火桶を遠くへ押しやり、着物の衿をはだけて飲んでいた。いかにも狼藉な飲みぶりであるが、甲斐は気づかないようすで坐った。
「貴方は躾がいい、貴方は家従の躾がなかなかいい」といきなり七十郎が云った、「いま伊達の家中で、これだけ勝手に飲める家はほかにはない、家従はみなよく躾けてあるし、酒はいいし、肴もよろしい、二年ほどまえには家政逼迫というように聞いていたが、国老になるとやっぱりみいりが違うんですな、原田さん」
「きげんがいいらしいな」と甲斐が云った、「なにかいいことでもあったのか」
「きげんがいいですって」
「江戸でいさましく宣告した筈ではないか、もう原田を訪ねる必要はないって」
七十郎はにっと笑い、覚えはいいんですね、と云った。そして、盃を呷って、それに手酌で注いで、下に置いてから甲斐を見た。
「記憶もいいし、度量もある」と七十郎は云った、「じつを云うと、門前ばらいをくうかと思っていましたよ」
「用を聞こうか」
「まあせかせないで下さい」と七十郎は盃を取った、「私のような処士は、なかなかこういう御馳走にはありつけませんからね、――一つ受けてくれますか」