Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
甲斐は眼をそらしながら頷き、帰ろうかねと云って、竿をあげた。宇乃は、もう少しと云いたげな眼で、甲斐の顔を見まもったが、甲斐は気がないようすで糸を巻き、餌箱を持った。
「わたくしが持ちましょう」と宇乃が餌箱へ手を出した。
甲斐はうしろを見て、その茶道具を持っておくれ、と云った。宇乃は茶道具の入っている竹籠を持ち、淵のほうへ振返った。
「いまの鯉は、そのときの主の子供でしょうか」
「どうだかな」
「そうだとようございますわね」
「どうして」
「どうしてでも」
甲斐は笑って歩きだした。
屋敷へ帰ると、甲斐はゆっくり朝食をとった。伊東七十郎のほかに、訪問者が三人待っており、あとからまた二人来て、それらとの用談が済むと、宮崎筑後から、招宴の使いが来た。筑後は本丸城代で、これまであまり親しいつきあいはなかった。片倉隼人は、断わってもいいだろう、と云ったが、甲斐はゆくと答えさせた。
「七十郎はまだいるか」
「ずっと飲み続けで、だいぶ酔っているようでございます」
「与五が鹿の肉を持って来たそうだが、油焼きにして、少し七十郎に出してやれ」
そう云って甲斐は立ちあがった。
甲斐がはいってゆくと、七十郎は、あぐらをかいている片方の裾を捲り、その裸になった膝をぴたぴたと叩いた。