Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
おみやはいまでも、人の眼を恐れなければならない。いまでも、――三年このかたの、苦しいみじめな日々を思い返しながら、おみやは新八の気持を、痛みのようにはっきりと理解した。
「それでこれから、どうしようというの」
「おれは芸人になる」と新八が云った。
おみやは眼をみはった。新八は、まえからの望みだ、と云った、「いつか道場のおれの部屋で、おまえは机の上に本があるのを見た、勉強しているのだと思ったらしいが、あれは浄瑠璃本だった」
「わかったわ」とおみやは弱よわしく彼をにらんだ、「きっとお久米さんがすすめたんでしょ」
「お久米か」と新八は唇で笑った、「そうだ、あの女にもそんなことを云われた、しかしそれだけじゃあない、ずいぶん考えてみて、結局それがいちばんおれにふさわしいと思ったんだ」
「あんたの声は唄に向いててよ」
「声なんかどっちでもいい、おれはいま新らしい唄をくふうしているんだ」
「新らしい唄ですって」
「これまでとは違う唄だ」と新八は云った、「義太夫浄瑠璃でもなく長唄でもない、もっと人間の心にしみるような、もっとじかに悲しさや嘆きや美しさを――いや」
新八は首を振り、まだ云えない、口では云えない、と昂奮した調子で云った。