Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
というところまで話したとき、藤井が戻って来た。うしろに、鶴千代を抱いた乳母が続き、侍女が二人付いていた。
甲斐は話しをやめて、座をさがった。
「甲斐に抱かせてやれ」と綱宗が云った。
夫人の三沢初女が鶴千代を抱き取り、自分で立って来て、甲斐に渡した。
綱宗のその第二子は、数えて三歳になる。よく肥えた丈夫そうな子で、甲斐に抱かれると、片言でなにか云い、笑いながらばたばたあばれた。甲斐のぶきような抱きかたを見て、綱宗が、原田は子を抱いたことがないようだな、と笑った。鶴千代は甲斐にかじりつき、両手で耳をつかもうとした。小さな手で甲斐の左右の耳をつかみそうにして、甲斐の眼を見て、つかむのをやめ、こんどは片手で甲斐の頬を打った。
ひた、という柔らかな音が、みんなの耳に聞えた。甲斐は微笑しながら、「もういちど」と云った。鶴千代はまた彼の頬を打ち、打つと同時に泣きだしながら、両手で甲斐の頸に抱きついた。
「おお、お強いお強い」
甲斐は幼児を抱きしめ、静かにその背を撫でながら云った。
「お強いからもう泣きません、はい、もうごきげんが直りました」
「とってやれ」と綱宗が云った。