Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
三味線の音はさびて低く、嘆息のような、訴えるような調子だったし、唄の曲も極めてじみで、殆んど語っているというに近かった。
甲斐は一と口舐めた盃を、手に持ったまま膝の上におろし、眼をつむって聞きいった。唄は静かに続いていた。
「――君をおもえば、かちはだし、ゆきてはかえり、かえりてゆくは誰がためぞ」
甲斐はふと眼をほそめた。
――どこかで聞いたことのある節だ。
どこかでいちど聞いた覚えがある、と甲斐は思った。すると一人の老人の姿が、ぼんやりと、濃い霧のかなたにあるように、おぼろげにおもいうかんできた。古びた布子に袴をはいて、総髪にむすんだ髪は灰色になっていた。
――盲人だった。
そして二絃琴を弾いたのだ。そうだ、涌谷へゆく途中、湯ノ原の宿で会い、俊基関東下向のくだりを聞いたのだ。
――そうだ、名は忘れたがもとは絵師だと云っていた、失明してからも、頭の中で絵を描きつづけている、十五六枚とか、頭の中に描き溜めた絵がはっきり残っている、などと語っていた。
新八の唄には、あの盲人のうたった調子と似たところがある。人の世のたのみがたさ、愛憎のむなしさ、生きることのはかなさといったものを、ひそかに嘆き訴えるようなひびき。