Japanische Klassiker mit Furigana
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たなださいばんちょうのかいし
橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇 (たなださいばんちょうのかいし) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.181 Zeichen · 219 Bildschirme
逐電したならしたで、どうかその顛末を聞かせて欲しい、とたびたび棚田の屋敷へ足を運んで来ましたが、もちろん当主が逢おうはずもありません。いい加減なことばかり並べたてて追っ払っていました。が、この残忍な、我儘な家老の評判はあちらこちらに響き渡っていましたから、ハハア! と僧にも頷けるものがあったかも知れません。が、確かに許嫁は殺されているとは思っても、実否もわからないことですし、無念を晴らしてやりたいとは思っても、相手は殿様を除いては土地随一の威権赫々たる御家老では力のない僧侶の身には手も足も出るものではありません。
思い余ってある時、この坊さんは、秘蔵の一管の尺八を携えて、家老の屋敷へ忍び入って来たことがありました。家老はちょうど御殿へ出仕して留守でしたが、少し頭のおかしくなった坊さんは、池の岸によろよろとそびえ立ってる松の根方に腰を降して、携えて来た尺八を取り出しました。静かにこの屋敷の内のどこかで死んでいるであろう許嫁の腰元の魂に、せめては昔から好きであった、この尺八の音を聞かせてやりたいと思ったのでしたが、やがて歌口を湿して吹き出してきた曲は、泣くように、咽ぶように、力ない人間の不甲斐なさを天に訴えているとしか見えません。