Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
の額と、良寛の歌――「いかにしてまことのみちにかなわなむちとせのなかのひとひなりとも」――の掛軸とに眼をやりながら、いつもにないしんみりした調子で話し出した。それは、彼がまだ一年生のころ、朝倉夫人と二人きりで、その額と軸とを前にして、いろいろと問答をした日のことだった。
彼の話は、かなり写実的だった。その時の周囲の光景、たとえは窓の日ざしがどんな工合だったとか、卓の上にはどんな花瓶がのっており、それにどんな花が活けてあったとかいったようなことから、夫人がその時着ていた着物の色のことまで、記憶をたどって話した。そして、その時ふたりの間にとりかわされた対話も、出来るだけ直接話法を用いようと努力した。ことに夫人が、最後に、「芦の花って真白でしょう、その真白な花が一面に咲いている中に、真白な鳥がまいこんだというのですわ。」と言って微笑し、「もうこれでおしまい、ほほほ。」と謎のような笑い声をのこして階下におりて行ったところなどは、まったくその時の夫人の言葉そのままだった。
「僕が、その時のことを、どうしてこんなにはっきり思い出すことが出来るのか、僕自身にもふしぎなくらいですが――」