Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
そして次郎がそばを通りぬけようとすると、
「あっ、本田、ちょっと待合室で待っていてくれないか。用があるんだ。今すぐ行くからね。」
と、いかにも急に用事を思い出したかのような調子で言った。
次郎は、不快というよりか、何か不潔な感じがした。しかし、強いてこばむことも出来ず、すぐ待合室に行って空いた席に腰をおろした。
腰をおろした彼は、曾根少佐の用事はいったい何だろうと考えた。馬田との立ち話もいくらか気になった。しかし、そんなことよりも彼にとって大事だったのは、朝倉先生の最後の眼だった。その眼がすべてを押しのけて、彼の眼底にちらつき出した。
険しい眼だった。朝倉先生の眼とは思えないほどつめたい、険しい眼だった。それは訣別の悲哀を物語る眼だったのか。断じてそんなものではない。先生の眼が、そんなことで、あんなにつめたく、あんなに険しくなろうとは、とうてい想像も出来ないことなのだ。
ではあの眼は何を意味する眼だったのか。――彼は急に、あの時の自分の仕草を省みて、ひやりとした。
飛びあがりもの! ただ自分を眼立たせたいためばかりに、ひとり列をはなれて軽業師のような真似をしていた飛びあがりもの! そんなことは、馬田のような生徒でもめったにやらないことではないか。