Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
……じゃ失礼します。」
次郎はいそいで階段を上りながら、徹太郎叔父も、学校の先生だけあって、やはりこんな場合には事なかれ主義らしい、という気がして、ちょっとさびしかった。道江がお芳か姉の敏子(徹太郎の妻)かにしゃべったのはもうたしかであり、そのあまりなたよりなさには、むかむかと腹も立った。
俊三はもうその時には蚊帳のなかでいびきをかいていた。
次郎には、なぜか、俊三がにくらしくもあわれにも思えた。そして、机によりかかってじっといびきに耳をかたむけるうちに、子供のころの自分の生活に、よかれあしかれ、あんなにも探いかゝわりをもっていた肉親のひとりが、今はまったく別の世界に住んでいる。人間というものは、年月がたつにつれ、こうして次第にわかれわかれになって行くものだろうか、などと考えて、変な気持になって行った。
しかしノートをひらいて血書の文句を書き出した時には、彼はもう一途な力強い感情におされて、徹太郎のことも、道江のことも、俊三のことも忘れていた。そして、書き終った文句を何度も何度もよみかえしたあと、足音をしのばせるようにして階下におりていったが、やがてもどって来た彼の手には、父の西洋かみそりと一枚の小皿とがにぎられていた。