Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
諸君はそれを承知してくれるのか。」
「むろん承知だ。」
色の黒い美少年の梅本がまず叫んだ。つづいて「賛成」という声が五六ヵ所から起った。
「では、賛成のものはこれに署名してくれ。僕は決して強制はしない。ほんとうにこの血書の意味を理解してくれる諸君だけの署名を求めるんだ。他のどんな手段にもたよらないで、ただ自分の血で願いとおそうという諸君だけの署名を求めるんだ。失敬だが僕がまず署名する。」
新賀はそう言って田上のまえの教卓に血書をひろげ、年月日の書いてある真下に万年筆で署名した。それから、かくしに手をつっこんで、しきりに何かさがしていたが、やがて取り出したのは小さなペンナイフだった。彼はそれをひらくと無造作に左手のくすり指をその尖端でつっついた。そしてちょっと顔をしかめてその指先を見つめていたが、すぐそれを自分の名前の下におしつけた。
彼の無造作な挙動にひきかえ、室内はまるで画のように静まりかえっていた。ただ、もしその場に非常に注意ぶかい観察者がいたとすれば、その人は、次郎が自分の眼にそっと両手をあてて涙をふいていたことと、馬田が変におちつかない眼をして、ぬすむようにみんなの顔を見まわしていたこととに、気がついたであろう。