Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
を開いて剣舞までやって見せてくれたりしていたので、手紙を書くのにも気は楽だった。しかし、その壮行会の席につらなった人たちの中に、恭一と道江という二人の人間がいて、何かにつけ睦じく言葉をかわしていたことは、かれにとって消しがたい悩みの種になっていた。
「恭一さんは、大学はどちらになさるおつもり? 東京? 京都?」
「東京さ。」
「すると来年は次郎さんとあちらでごいっしょね。うらやましいわ。」
「道江さんは、女学校を卒業するの、さ来年だね。」
「ええ。」
「あと、どうする?」
「あたしも、東京に出て、もっと勉強したいわ。でも、うちで許してくれるかしら。」
「そりゃあ、話してみなけりゃあ、わからんよ。」
「恭一さんは賛成してくださる?」
「道江さんが本気で勉強する気なら、むろん賛成するさ。」
次郎はそこまで回想しただけで、もう頭がむしゃくしゃして来るのである。しかも、そのあと、道江はだしぬけに、
「次郎さんも賛成してくださる?」
と、質問をかれのほうに向けた。かれは、その時、
「う、うん、賛成してもいいね。」
と、半ば茶化したような調子で答えたが、それがゆとりのある茶化し方ではなく、むしろ虚をつかれて、どぎまぎした醜態をかくすための苦しい方便でしかなかったことは、だれよりもかれ自身が一番よく知っている。