Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
「本田さん、まってました。」
「先生、お願いします。」
「小母さんも、どうぞ。」
塾生たちがほうぼうから叫び、拍手が何度も鳴りひびいた。
いつもなら、次郎がすぐ立ちあがって何かやるところだったが、今日は変に立ちしぶっていた。すると、朝倉先生が、急にいずまいを正し、謡曲でもやりだしそうな姿勢になった。みんなは急にしんとなって、片唾をのんだ。
「猛虎一声、山月高し――」
朗々たる詩吟の声が流れた。ところが、詩吟はそれっきりで、そのあと先生は、ひょいと畳に両手をついて四つんばいになった。そして首を前につき出し、しばらく塾生たちのほうをにらめまわしていたが、いきなり、その咽から、
「うおーっ」
と、窓ガラスを振動させるような、すごいうなり声がほとばしり出た。これは先生がいつもやるたった一つのかくし芸だったが、はじめての塾生たちの中には、虚をつかれて、思わず首をちぢめたり、「ひやッ」と叫び声をあげたりするものもあった。今夜もそうだった。しかし、あとは笑い声と拍手の音がながいこと室内にうずをまいた。
笑い声がしすまりかけると、塾生のひとりが言った。
「先生、それは先生の郷土芸術の一つですか。