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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

」

「まあ、そんなものだ。」

「何だか、あいまいですね。」

「私は、子供のころ、父が転任ばかりして、ほうぼううろついていたものだから、実は、郷土というほどの郷土を持たないんだ。今のところ、しいて郷土を求めるとすれば、この塾の近所がそうかな。」

「じゃあ、ここいらの民謡でも。」

「そいつは無理だ。ここに落ちついてから、まだながくならんのでね。それに、第一、こんなに東京に近いところでは、民謡なんか、残っているはずがないよ。」

「今度は小母さんの番だ。お願いしまあす。」

だれかが夫人のほうに鋒先を向けた。

「あたしも郷土芸術はだめ。」

「何でもいいんです。」

すると、すみのほうから、

「猫の鳴き声。」

と、小声で言ったものがあった。笑いがまた爆発した。朝倉夫人も笑いながら、

「猫の鳴き声なんか、陰気じゃありません? それよりか、ここには友愛塾音頭というのがありますから、あたしそれをご披露しますわ。」

一せいに拍手がおこった。夫人は、

「では、本田さん。」

と、次郎に目くばせした。次郎は自分のそばにおいていたガリ版刷りを塾生たちに渡した。それには音頭の歌詞が印刷してあったのである。