Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

「次郎さん、東京は、まあ、大変ですってねえ。」

「ええ、おききでしたか。」

「たった今、塾長室できいて来ましたの。」

「それで、今日は田沼先生がおいでになるそうです。」

「それもうけたまわりましたの。――でも、恭一さん、よく気をきかして早くお知らせくだすったわね。」

「大沢君と二人で、塾のことを心配しているらしいんです。」

朝倉夫人は何度もうなずいたきり、それには返事をしなかったが、しばらくして、

「五・一五事件の時も私たちいやな思いをしましたけれど、今度はそれどころじゃないらしいわね。でも、世間の人たちは、あのころよりか、かえって目を覚まして来ているんじゃないかしら。」

「そうかもしれません。しかし、それだけに、無理な圧迫もいっそうひどくなるでしょう。」

「そうね。悪い時代って、そんなものね。」

と朝倉夫人は、しばらく何か考えていたが、

「でも、おちつきましょうよ。せめて、あたしたちだけでもおちつかないと、これから育つ人たちに申しわけありませんわ。それにながい目で見ると、世の中は、おちついてあたりまえのことをする人の希望どおりに、きっとなっていくものですわ。あたしそう信じるの。