Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
その中には、だれがどんな場合にどういうことを言ったのかさえ、今でもはっきり思い出せるものも少なくはないのです。女というものは、そういうことについては男よりずっと敏感だということを次郎さんがお認めくださるなら、私が恭一さんと許婚の間柄だと信じこんでいたのも無理はない、とお許しいただけるのではありますまいか。そしてそれをお許しいただけますなら、私が恭一さんをお慕い申しあげる気持ちがそのために日に日に深まっていって、今ではそれだけが私の生きる力になっている、と申しあげても、きっとおさげすみにはならないだろうと信じます。」
次郎は、こうした理詰めの言葉がつづけばつづくほど、かえって道江の苦悩の深さを感じた。一心不乱になって色青ざめている額の下から、二つの眼がじっと自分のほうを見つめているような気さえするのだった。
「しかし、何という愚かな私だったことでしょう。私はこれまで、私の希望をつなぐために何よりもかんじんな、というよりは、それを忘れては何もかもが空になるような、ただ一つのよりどころを、私自身ではっきりたしかめることを忘れていたのです。私はながい間、いわば根のない希望の花を胸にさして、水だけを周囲の人たちに注いでもらっていたようなものでした。