Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
三 大河無門・平木中佐
しかし、かれの眼にうつったのは、塾生の名前や経歴ではなくて、やはり荒田老の顔であり、道江の顔であった。
かれは名簿をなげすて、もう一度ふかい息をして、床の間のほうに眼を転じたが、そこには、「平常心」と大書した掛軸が、全く別の世界のもののように、しずかに明るくたれていた。
三 大河無門・平木中佐
昼近くになっても、次郎は広間を出なかった。陽を背にして窓によりかかったままぼんやり塾生名簿を見たり、眼をつぶったり、床の間の掛軸をながめたりして、落ちつかない気持ちを始末しかねていたのである。
「あら、次郎さん、朝からずっとこちらにいらしたの?」
和服の上に割烹着をひっかけた朝倉夫人が廊下の窓から顔をのぞかせ、不審そうにそう言ったが、
「ご飯はこちらでいただきましょうね。そのほうがあたたかくってよさそうだわ。じゃあ、すぐはこびますから、先生をお呼びして来てちょうだい。」
と、すぐ顔をひっこめた。
次郎は返事をするひまがなかった。というよりも、変にあわてていた。かれはいきなり立ちあがって、部屋の片隅につみ重ねてあった細長い食卓の一つを、陽あたりのいい窓ぎわにおくと、走るようにして空林庵に朝倉先生をむかえに行った。