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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 159.223 Zeichen · 320 Bildschirme

Aozora Bunko

僕、誰にも言わないから。」

俊三は、ほっとしたような、心配なような顔つきをして、母屋の方に去った。

そのあと、次郎の心には、そろそろとある不思議な力が甦って来た。むろん、彼に、十字架を負う心構えが出来上ったというのではない。彼はまだそれほどに俊三を愛していないし、また、愛しうる道理もなかった。俊三に対して、彼が感じたものは、ただ、かすかな燐憫の情に過ぎなかったのである。しかし、このかすかな憐憫の情は、これまでいつも俊三と対等の地位にいた彼を、急に一段高いところに引きあげた。それが彼の心にゆとりを与えた。同時に、彼の持ち前の皮肉な興味が、むくむくと頭をもたげた。自分でやったことをやらないと頑張って、母を手こずらせるのも面白いが、やらないことをやったと言い切って、母がどんな顔をするかを見るのも愉快だ、と彼は思った。いわば、冤罪者が、獄舎の中で、裁判官を冷笑しながら感ずるような冷たい喜びが、彼の心の隅で芽を出して来たのである。

彼はもう誰も怖くはなかった。父に煙管でなぐられることを想像してみたが、それさえ大したことではないように思えた。むしろ彼は、これからの成り行きを人ごとのように眺める気にさえなった。