Japanische Klassiker mit Furigana
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えどのかじゅつ
江戸の火術
野村 胡堂
Lesen Sie 江戸の火術 (えどのかじゅつ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.929 Zeichen · 36 Bildschirme
を奪わせて、平気で居られるか」
「――――」
「二た月後に迫る、砲術の御前試合に勝ち度さに、妹に売女の真似をさせ、相手の『秘巻』を奪い取って済むと思うか、恥を知れッ、犬奴ッ」
井上半十郎は縛られたまま、縁の上ににじり上って、涙を含んだ悲憤の睚を裂きました。
「貴公には、俺の本意が解らぬよ、井上」
「卑怯者の本意など、解ってたまるものか、其方はそれで本望だろうが、兄の卑怯な望の為に、道具に使われた繁代殿、恥を恥とも思わぬ売女枕捜しの真似をさせられて、女心がそれで済むか」
「――――」
稲富喜三郎は黙って井上半十郎の爆発する激怒を見やりました。これほど迄に罵られ、恥しめられ乍らも、高々と腕を組んだ喜三郎の逞ましい顔には、何の悔も無いのが不思議です。
隣の室からは、女の啜り泣く声が聞えます、曾ての許婚半十郎に、売女枕捜しとまで罵られて、繁代は身も世もあらぬ思いだったでしょう。咽び入る泣き声は、激情に引千切られて、絶えも入るように、切々に聞えるのでした。
「井上、――貴公の言うのは、一応尤もだが、この稲富喜三郎、それ程卑怯者でないことは、長年の交際で、大方は知って居る筈ではないか」