Japanische Klassiker mit Furigana
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えどのかじゅつ
江戸の火術
野村 胡堂
Lesen Sie 江戸の火術 (えどのかじゅつ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.929 Zeichen · 36 Bildschirme
大筒は出来た
が、それを言い出した稲富喜三郎は、一体何を目論でいることでしょう。
「貴公の井上流の大筒に、俺の稲富流の強薬を用いさえすれば、五貫目玉五十丁撃は楽々と出来る筈だ」
「――――」
「繁代に貴公の『秘巻』を奪い取らせたのは、貴公の大筒に、俺の強薬を試み度い為だ、――貴公を此処へおびき寄せて、卑怯なようだが罠で生け捕ったのは、井上流大筒の試し撃が済むまで、貴公の智恵を借り度い為だ、書いたものだけでは、心もとないではないか。喃、井上」
何んと言うこと、その真意は知りませんが、言い放って稲富喜三郎は、カラカラと笑い飛ばすのです。
「――――」
井上半十郎は無念の唇を噛むばかり、隣室の泣き声は次第に弱って、虫の声がそれを押し包んで行くのでした。
大筒は出来た
それから一と月余り、山の中には世にも不思議な日が続きました。
井上半十郎は物置のような一と間に入れられ、時々引出されて、大筒の尾栓鋳造に手伝わされますが、多くは三人の獰猛な男に監視されて、逃げ出すことなどは思いも寄りません。
繁代は赤い書き痣を洗い落して、世にも美しい昔の姿に還りましたが、半十郎を欺いた一夜の罪に恥じ恐れたものか、それからは滅多に姿も見せず、たまたま不用意に顔を合せても、ヒラリと隠れて半十郎の悩みを増すばかりです。