Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lesen Sie 沼夫人 (ぬまふじん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 78 Bildschirme
後がたちまち真暗になるのが、白の一重芥子がぱらりと散って、一片葉の上に留りながら、ほろほろと落ちる風情。
「こりゃ、どうかしているな。」
現と幻との見境さえ附きかねた。その上、寒気はする、頭は重し、いや、耐らぬほど体が怠い。夜が明けたら、主人の一診を煩わそうまでは心着いたが、先刻より、今は起直る力がない。
特に我慢のならぬのは、呼吸苦しいので、はあはあ耳に響いて、気の怯けるほど心臓の鼓動が烈しくなった。
手を伸ばすか、どうにかすれば、水差に水はある筈、と思いながら、枕を乗出すさえ億劫で、我ながら随意にならぬ。
ちょうど、この折だったが、びしょびしょ、と水の滴るような音がし出した。遠くで蚊の鳴くのかとも聞えるし、鼠が溢したかとも疑われて、渇いた時でも飲みたいと思うような、快い水の音信ではない。
陰気な、鈍い、濁った――厭果てた五月雨の、宵の内に星が見えて、寝覚にまた糠雨の、その点滴が黴びた畳に浸込む時の――心細い、陰気でうんざりとなる気勢である。
「水差が漏るのかな……」
亀裂でも入っていたろう。
「洋燈から滲出すのか……」
可厭な音だ。がそれにしては、石油の臭がするでもなし……こう精神が濛としては、ものの香は分るまい。