Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
葉子は、もう、厭な顔一つしなかった。もう黒吉の醜い顔を、いくら近附けても、嗤わなかった。いくらシッカリ抱きしめても……、雨のような、弾丸のような、激しい接吻に、その匂うような葩の顔が、ベトベトと濡れ果てても……。
(なんという幸福であろう――)
だが、黒吉は、その幸福に、これ以上、酔っているわけには行かなかった。気のせいか、はっと顔を上げて見ると、長い秋の夜がすでに去ってもう空が白々と明るみかけて来ていたのだ。
(人にみられたら……)
人に見られたらもうお仕舞なことは、解りきっている。この葉子と引離された揚句、自分は死刑の宣告を受けて、何処か訳のわからぬ墓穴の中へ投込まれてしまうのだ。
死刑は別に恐ろしくなかった。ただ折角手に入れた葉子と引離されることが堪えられなかった。
黒吉は、さんざん考えた末、葉子を、空につれて行くことに考えついたのだった。
そう思いつくと、葉子の死骸を、長いことかかって格納庫まで引ずるように、持って来、勝手知った出入口から忍込んで、たった一台しかない旧式練習機の、座席の足元から横に開いた特別広い空胴の中に、無理矢理押込むと、あとは知らん顔して飛行を待っていたのだった……。