Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
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飛行機は飛びだした。幸い誰も気づかなかった――。黒吉と葉子の、空の新婚旅行がはじまったのだ。
傍に設えられた高度計の目盛は、グングン廻って行った。遙かなる地球は、蹌踉として足下に、のたうっている……。
黒吉は、やがて、思い出したように、その足元の風呂敷包みを解きはじめた。引めくるように、その風呂敷がとられると、いきなり露出しにされたものは、あの美しく、年若き妖婦、葉子の、それこそ一糸も纏わぬ全裸の肢体だった。
そして、既に、魂は去っていたが、その蒼白い、均斉のとれた美事な肢体は、飛行機の蠕動を受けて、さも生けるもののように、くねくねと顫え、黒吉の膝の下に、従順に、跪いているのだった。
「葉ちゃん――俺の、俺だけの、葉ちゃん……」
勢一杯に呶鳴った声は、儚くも虚空に、飛散してしまった。
でも、黒吉は幸福だった。彼は、飛行帽の中で、厚い唇をペラペラ舐めずると、さも嬉しそうに、醜い顔をにたにたと頽しながら、倦かず葉子の淫らな姿に見入るのだった。
十一ノ五
無限に澄み切った、目の玉の溶ろけるような青空の中で、黒吉は、葉子をシッカリ抱いたまま飛んでいた。