Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

川ッぺりのビルとビルとに挟まれた狭い露地――その奥の、ビルの宿直部屋にでも下りるような階段を下りると、その突当りに“Bar Opal”と、素人細工らしい小さい木彫のネームがぶら下っていた。

だからあの時、私がふと小用を催さなかったならば、このバーの存在を知らずに過してしまったであろうし、又、これから記すような、奇妙な事件にも遭わなかった筈なのである。

ところで、このようなバーにも先客が一人いた。それは、部屋の片隅の椅子に、雑巾のように腰をかけ、ちびりちびりとグラスを舐め、或いは何か物に憑かれたような熱心さで手帳に鉛筆を走らせている老人であった。十年一日のような疲れた黒洋服、申訳ばかりのネクタイを絡みつけた鼠のワイシャツ――。だが卵で洗ったような見事な銀髪と、時々挙げる顔の、深い皺をもった広い額とは、ふと近より難い威厳を見せてもいた。

私の方では、はじめから気がついていたのだが、老人の方では、ややしばらく経ってからやっと気がついたらしく――、しかし気がつくとすぐ椅子を立って私の方にやって来た。そして、何かと話しかけるのである。

はじめのうちは、都会人らしく打解けずに、肩を聳かしていた私も、この老人の、様子に似合わぬ若々しい声と、それに私自身、いつになくアルコオルが廻っていたせいか、何時の間にか受け答えをし