Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
医者であっても、開業医ではない村田の
「おい、医者を呼んでやれ、医者を――」
とバーテンにいっている声を聞きながら、喜村は、小犬をポケットに抱き入れると、美都子をせかしてバーを出た。
間もなく村田と、それにつづいて二三人の客が、気味悪そうに出て来た。
「可哀そうなことをしたね、……しかもこれは伝染系統がはっきりしないんだから気味が悪いよ」
村田は、夜ふけの冷気に、寒そうにオーバーの襟を立てながら、そう呟いた。
「やだね」
「ほんとにねえ、あたし、もう東京に来るのがこわくなったわ……茅ヶ崎にはまだ一人も出ないわよ」
美都子もそういいながら、冷え切ったアスファルトにハイヒールを響かせていた。
まるで申し合せたように逢った銀座裏のバーを出ると、三人は美都子を中にして新橋の方に歩いて行った。
「よしよし、よしよし……」
喜村は、ポケットのなかの小犬を、そういいながらあやしていたが
「仕様がないな、東京に来たせいか、とても神経質になっちまったよ――」
「だからお止しなさい、っていったのに――、汽車で見つかっても知らないわよ」
「大丈夫さ――、たぶん」
小犬は、まだくーん、くーんと鳴いていた。