Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
中野は窓際に馳寄ると、外を覗いて見た。しかし、其処は、右も左も満々たる大海原の真只中で、針でついたほどの島影も見えない――
「まだ、ですね」
「いや、そこだよ」
「でも見渡すかぎりの海で……」
「島は隠してあるのさ、俗物の近寄らんように」
「島を隠してある?」
「そうだよ、つまり蜃気楼、人工蜃気楼で一面の海のように見せかけてあるんだ」
「ほう……」
「これなんか一寸面白いと思うね。例えば敵機が大編隊で東京を空襲に来る。防禦の飛行機が舞上るが、とても全部撃墜というわけには行かない。半数位は薄暮の東京上空に侵入して毒ガス弾、爆弾を雨霰と撒きちらし、東京全市は大混乱の末、まったくの廃墟と化した――、と思うと、実はこれは人工蜃気楼で東京全市を太平洋に浮べてあっただけだから、敵は命がけで遠い所を爆弾を運んで、なんのことはない太平洋に爆弾を棄てに来たようなものであった……とはどうだ。面白い筋書じゃないか」
細川三之助は、なかなか饒舌だった。
なるほど面白い話だけれど、しかし中野五郎は、いま後のドアーを細目にあけて覗きこんだ慶子の眼と、人工蜃気楼の奥にかくされた、まだ見ぬ島の様子の想像とに、すっかり気を奪われて、うわの空であった。