Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
それでも、注意深く、あたりに人気のないのを見澄ますと、こそこそと体を跼めながら、いまにも崩れそうに積上げられた座蒲団の隙間へ、潜り込んで行った。
その隙間は、如何にも窮屈だったが、妙にぬくぬくとした弾力があって、何かなつかしいもののようであった。黒吉はやっと※とした落着きを味わいながら、あの煎餅のかけらを持ち迭えると、それがさも大切な宝石でもあるかのように、そーっと手の掌に載せて見た。
(これが、葉ちゃんの喰いかけだな)
そう思うと、つい頬のゆるむ、嬉しさを感じた。……大事に大事にとって置きたいような、……ぎゅっと抱締めたいような――。
黒吉は、充分幸福を味わって、もう一遍沁々と、薄い光の中で、それを見詰めた。こうしてよくよく見ると、気の所為か、その一かけの煎餅は、幾らか湿っているように思えた。
気をつけて、触ってみると、確かに、喰いかけのところが一寸湿っていた。
(葉ちゃんの唾かな)
黒吉の、小さい心臓は、この思わぬ、めっけものにガクガクと顫えた。
彼は、いくら少年だとはいえ、無論こんな一っかけの煎餅を、喰べたいばかりに、拾って来たのではなかった。