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Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

溺れる者のように、例え藁屑にでも、シッカリと縋りつきたい気持に、苛々しながら、歩き廻っていた。

何か、偉大な力に、骨のベシベシ折れるほど堅く抱擁されたら……きっと、落着くに違いない、と思った言葉の先きに、ふと、

(葉子)

が浮んだ。

「そうだ。葉ちゃんが……」

思わず呟いて、立上った。

歩き廻ったせいか、額に、脂汗の浮くのを覚えた。

ダガ――。忌わしい翳が、又黒吉を悒欝の底に押戻した。

(この頃、葉ちゃんは少し変じゃないか。さっきだって、俺が、親方に怒られるのを見に来たんだ。そればかりじゃない、ワザと俺にだけ、指輪の失くなったのを教えないで、親方に怒らせようとした……)

次から次へと、最近の葉子の、冷めたい仕打ちが、浮んで来た。

(何故葉子は、俺が、嫌になったんだろう……)

黒吉は、そう考えると、今まで想像もしたことのない、激しい空虚な気持に襲われて来た。あの白昼夢の恐怖なぞ、古びた写真のように、ぼやけて仕舞った。

失恋――。黒吉は、愕然とした。

「ば、莫迦な……」

(そんなことが、あるものか)

口の中で、いくら呶鳴ってはみても、不安は増しこそすれ決して減りはしなかった。