Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
貧しくとも津の村ざとにいれば白い菜をたべていても、彼女と一緒にいられるではないか、彼女を失うてしまったら再びああいう女は自分のところに来てくれはしないであろう、彼女を失うために彼は都にのぼって行くようなものだ。彼の焦燥は彼のなかに荒れ立ってゆき、彼は身動きもせずに愉しい五年の月日をあとぐりし、それにふたたび逢えなくなればどうなる自分であろうか、筒井がいるために貧窮すら応えず、そして彼女がいたために多く掠めた畑物の咎は、百姓だちから許されていたようなものだった。何と多くのかなしい百姓だちが筒井をただひと眼見るために、まずしい彼の家の垣根越しに声をかけて行ったことであろう、かなしいそれらの百姓に筒井はみんなとおなじに均しく良い挨拶をあたえていた。そして青い川波に眼をおとして茫然自失するような状態をつづけて行った。彼はくるしげに、こういってもう恥をわすれているようだった。
「ねえお前、なにか答えてくれてもよさそうなものではないか。」
この急激におそうた哀別は、男をふたたび茫然自失のあられもない世界に趁い込んで行った。自分にすぎた筒井であっただけ眩ゆいばかりの妻を得ていることが、どういう倖せにも増して底の深い倖せであったことであろう。