Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
貧と病いとにさいなまれている父を救うがために、彼女はふだんから信仰する観音さまへ三七日の夜まいりを思い立って、八月の末から夜露を踏んで毎晩清水へかよった。京も荒れて、盗賊の多いこの頃の秋の夜に、乙女ひとりの夜道は心もとないと父も最初はしきりにとめたが、藻はどうしても肯かなかった。彼女は父の病いを癒したい一心に、おそろしい夜道を遠くかよいつづけた。
しかし一七日の後には、藻に頼もしい道連れができた。それはかの千枝松で、彼は烏帽子折りの子であった。これも早くふた親にわかれた不運な孤児で、やはり烏帽子折りを生業としている叔父叔母のところへ引き取られて、ことし十五になった。叔父の大六は店あきないをしているのでない。京伏見から大津のあたりを毎日めぐり歩いて、呼び込まれた家の烏帽子を折っているのであった。したがって家にいる日は少ないので、千枝松は叔母と二人で毎日さびしく留守番をしていた。村こそ違え、同じ山科郷に住んでいるので、彼はいつか一つ違いの藻と親しくなって、ほかの子供たちには眼をくれないで、二人はいつも仲好く遊んだ。
「藻と千枝まは女夫じゃ」
ほかの子供たちが妬んでからかうと、千枝松はいつでも真っ赤になって怒った。