Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
独り寝の別れ
一
と、翁はさとすように言った。
「いや、おそろしゅうても構わぬ。わしは念晴らしに、その森の奥を探ってみる」
千枝松は鉈をとり直して駈け出した。
独り寝の別れ
一
止めても止まりそうもないと見て、陶器師の翁はおぼつかなげに少年のあとを慕って行った。二人は幽怪な伝説を包んでいる杉の森の前に立った。
杉の古木は枝をかわして、昼でも暗そうに掩いかぶさっているが、森の奥はさのみ深くもないらしく、うしろは小高い丘につづいていた。千枝松は鉈を手にして猶予なく木立ちの間をくぐって行こうとするのを翁はまた引き止めた。
「これ、悪いことは言わぬ。昔から魔所のように恐れられているところへ、夜ふけに押して行こうとは余りに大胆じゃ。やめい、やめい」
「いや、やめられぬ。爺さまがおそろしくば、わし一人でゆく」
つかまれた腕を振り放して、彼は藻の名を呼びながら森のなかへ狂うように跳り込んで行った。翁は困った顔をして少しく躊躇していたが、さすがにこの少年一人を見殺しにもできまいと、彼も一生の勇気を振るい起こしたらしく、腰から光る鎌をぬき取って、これも千枝松のあとから続いた。森の中は外から想像するほどに暗くもなかった。