Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
振り切ろうとしても玉藻は放さなかった。
「なんの用かは知らぬが、お前たちは慎みの身の上じゃ。勝手に夜歩きなどしても苦しゅうないか」
千枝太郎は行き詰まった。勿論、まだ表向きには謹慎も蟄居も申し渡されてはいないのであるが、この場合に謹慎は当然のことである。その身の上で勝手に夜歩きをする。ひとに見咎められては申し訳がない。彼もしばらく黙って突っ立っていた。
「それ、お見やれ」と、玉藻はほほえんだ。「おまえは今夜このお屋敷へなにしに参られた。お師匠さまのお使いか」
千枝太郎はやはり黙っていた。
「ほほ、言わいでも大抵知れている。そう思うて、わたしはさっきからここにお前を待っていた。一度は首尾して逢うてくれと、このあいだもあれほど頼んだに、お前はきょうまで素知らぬ顔をしている。それほどにわたしが憎いか。但しはお師匠さまと同じように、あくまでもわたしを魔性の者のように疑うているのか。お師匠さまはともあれ、山科の里で子供のときから一緒に育ったお前が、なんでわたしを疑うぞ。論より証拠はきのうの祈祷じゃ。お前たちもお師匠さまと一つになって、悪魔調伏の祈祷をせられたが、あっぱれその効験が見えましたか。