Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
もともと悪魔でもないわたしを百日千日祈ればとて呪えばとて、なんのしるしがあるものか、積もって見ても知らるることじゃ。関白殿は殊のほかの御立腹で、泰親はいうに及ばず、祈祷の壇にのぼった者は、一人も残さずに遠い鬼界ヶ島へ流せと仰せられたを、わたしが縋ってなだめ申したは、お前という者がいとしいからじゃ。お師匠さまはわたしに取っては仇じゃが、そのお弟子のお前はいとしい。あけても暮れても硫黄の煙りを噴くという怖ろしい鬼界ヶ島、そのような処へお前をやらりょうか。のう、千枝ま。わたしがこれほどの心づくしを、お前は哀れとも思わぬか、嬉しいとも思わぬか。ほんにほんに、むごい人、つれない人、憎い人、わたしは口惜しゅうて涙も出ぬ。察してくだされ」
彼女は千枝太郎の胸に顔をすり付けて、遣る瀬ないように身もだえして泣いた。男は女を抱えたままで、明るい月の下に黙って立っていた。
関白殿から今までなんの沙汰もなかったのは、玉藻が内からさえぎっていたのであることを、千枝太郎は今初めて覚った。名を聞くさえも恐ろしい鬼界ヶ島へ遠流――年の若い彼はさすがにぞっとした。それを救われたのは玉藻の情けであることを考えると、千枝太郎も情なく彼女を突き放すことも出来なくなった。