Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
幼い藻の顔と臈たけた玉藻の顔とが一つになって、彼の眼さきを稲妻のようにひらめいて通った。
「あきないが遅うなる」
千枝太郎は京の方角へ足を向けた。
むかしの相弟子や知りびとに顔をあわせるのがさすがに辛いので、彼はこれまで京の町へは商売に出なかったが、商売はどうでも京の町にかぎると叔父からも教えられ、自分もそう覚ったので、きょうは思い切って繁華な町の方へ急いで行った。その目算は案外に狂って、顔馴染みのない若い職人をどこでも呼び込んでくれないので、彼はひどく失望した。一日根気よく呼びあるいても、彼は京の町で一文も稼ぐことは出来なかった。
九月はじめの秋の日は吹き消すようにあわただしく暮れかかって、うすら寒い西山おろしが麻の帷子にそよそよと沁みて来たので、千枝太郎はいよいよ心寂しくなった。こうと知ったら京の町まちへ恥がましい顔をさらして歩くのではなかったものをと悔やみながら、疲れた足を引き摺ってとぼとぼと戻ろうとすると、六条の橋の袂で呼び止められた。
「烏帽子折りか。頼みたい」
振り返ると、それはもう六十に近い、人品のよい武士で、引立烏帽子をかぶって、萌黄と茶との片身替わりの直垂を着て、長い太刀を佩いていた。