Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
きょうもお宿でござりまするか」と、千枝太郎は訊いた。
「おお、奥にござるよ」と、一人が言った。「どうじゃ、そちも奥へまいってお目見得せぬか。女儀のことじゃで毎日出歩きもならぬ。さりとて初めてのお上りじゃで別に親しい友達もない。侍女どもばかりを相手にして、毎日退屈そうに送っていらるるは見るも気の毒じゃ。そちが参って都のめずらしいお話などお聞かせ申したらお慰みにもなろうに……」
それは千枝太郎が待ち設けているところであったので、彼は是非お目通りが願いたいと頼むと、家来の一人は奥へ立って行ったが、やがて一人の侍女らしい女を連れて来て、彼女の案内で庭口へまわれと言った。その案内に連れて、千枝太郎は草ぶかい庭伝いに奥の方へ進んでゆくと、昼でも薄暗い座敷のなかに、神々しいように美しい若い女が坐っていた。そのそばに一人の侍女が控えていた。
「烏帽子折りを連れてまいりました」と、千枝太郎を案内して来た侍女は言った。
彼女は千枝太郎を庭さきに残して、自分だけは縁にのぼって主人のそばに行儀よく坐った。
「初めてお目通り仕まつりまする」
千枝太郎は、草に手をつきながらそっと見あげると、正面に坐っている若い女――無論それが三浦の孫娘の衣笠であろう――年こそ少し若いが、その顔かたちはかの玉藻に生き写しであった。