Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
四人の弟子も感激して師匠の前を引き退がったが、泰親の居間には明るい灯があかつきまで消えなかった。
弟子たちは自分の部屋へ戻ってうとうとしたかと思うと、忽ちに師匠の声がきこえた。
「もう夜が明けたぞ。泰忠は早く支度して宇治へまいれ。早う行け」
「心得ました」
泰忠はすぐに跳ね起きて屋敷を出て行った。いつもならばこの使いは自分に言い付けられるものをと、千枝太郎は羨ましいような心持で門まで見送って出た。東がすこし白んだばかりで、深い霧の影が大地を埋めているなかを、泰忠が力強く踏みしめて歩んでいくのが、いかにも勇ましく頼もしく思われて、千枝太郎も一種の緊張した気分になった。
この時代の人が京から宇治まで徒歩で往き戻りするのであるから、帰りの遅いのは判り切っているので、千枝太郎は彼の戻って来るまで山科へ一度帰りたいと思った。
「ゆうべ出たぎりで、叔父や叔母も定めて案じておりましょう。昼のうちに立ち帰って、この次第を語り聞かせとう存じまするが……」と、彼は師匠の前に出て願った。
「もっとものことじゃ。叔父叔母にもよう断わってまいれ」
師匠の許しをうけて、千枝太郎は土御門の屋敷を出た。