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Japanische Klassiker mit Furigana

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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme

Aozora Bunko

と思うと、言い知れない一種の怪しい匂い、たとえば女の黒髪を燃やしたような怪しい匂いが、どこからともなしに湧き出して、無言の人びとの鼻に沁みた。

「あ、玉藻の御は……」と、熊武は床の下から伸び上がって叫んだ。

玉藻は毒薬を飲んだように身を顫わせているのであった。彼女の長い髪は幾千匹のくちなわが怒ったように逆立って乱れ狂っていた。忠通もおどろいて声をかけた。

「玉藻。さのみ恐るるな。予もこれにおる。強力の者どももそこらに控えているぞ」

彼女はなんとも答えなかった。いや、答えることが出来ないのかもしれなかった。彼女は骨も肉も焼けただれていくかとばかりに、さも苦しげに身をもがいて、再び顔をもたげようともしなかった。

「玉藻、玉藻」と、忠通はまた叫んだ。

夜嵐が又どっと吹きおろして来て、座敷の燈火も侍どもの松明も一度に打ち消されたかと思うと、玉藻の苦しみ悶えている身のうちから怪しい光りがほとばしって輝いた。それは花の宴の夕にみせられた不思議とちっとも変わらなかった。その光りのなかに玉藻はすくっと起ち上がった。おどろに乱れた髪のあいだから現われた彼女の顔の悽愴さ――忠通は思わずぞっとして眼を伏せると、彼女はしなやかな肩に大きい波を打たせて、燃えるようなほの白い息を吐きながら、あたりを凄まじく睨めまわして縁さきへよろよろと