Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
二
早く行け。早う帰れ」
僧は千枝松の手を取って門の外へ押しやると、くろがねの大きい扉は音もなしに閉じてしまった。千枝松は魂が抜けたように唯うっとりと突っ立っていた。しかし幾らかんがえ直しても、かの華陽夫人とかいう美しい女は、自分と仲の好い藻に相違ないらしく思われた。化生の者でもよい。悪魔の精でも構わない。もう一度かの花園へ入り込んで、白い象の上に乗っている白い女の顔をよそながら見たいと思った。
彼はくろがねの扉を力まかせに叩いた。拳の骨は砕けるように痛んで、彼ははっと眼をさました。しかし彼はこのおそろしい夢の記憶を繰り返すには余りに頭が疲れていた。彼は枕に顔を押し付けてまたすやすやと眠ってしまった。
二
第二の夢の世界は、前の天竺よりはずっと北へ偏寄っているらしく、大陸の寒い風にまき上げられる一面の砂煙りが、うす暗い空をさらに黄色く陰らせていた。宏大な宮殿がその渦巻く砂のなかに高くそびえていた。
宮殿は南にむかって建てられているらしく、上がり口には高い階段があって、階段の上にも下にも白い石だたみを敷きつめて、上には錦の大きい帳を垂れていた。ところどころに朱く塗った太い円い柱が立っていて、柱には鳳凰や龍や虎のたぐいが金や銀や朱や碧や紫やいろいろの濃い彩色を施して、生きたもののようにあざやかに彫られてあった。